LAVOS

2019.11.30

今回のゲストはNICENESSのデザイナー、郷さん。この度当店ではエクスクルーシヴのプロジェクトとして”LAVOS”をスタートいたしました。第一弾となるcar coatの解説を交えてお話を伺います。

石崎 まずは経歴から教えてください。

郷 どこからの経歴ですか?生まれ?

石崎 : あ、それだと遠すぎますかね。 洋服に携わるようになってからでお願いします。

郷 えーと、まずは東京でデザイナーズのアシスタント的なことをやってまして。その当時、ファッションコンペみたいなのがあって受けたんです。それでショーの景品みたいなもので留学のスカラシップがもらえたのでロンドンに引っ越しました。

石崎 : ロンドン、いいですね。それはいつ頃ですか?

郷 : 20056年?134年前ですか。

石崎 : 具体的に何をされてたんですか?

郷 スカラシップなんでファッションの学校に行ったんですけど、正直もうこっちで働いてたし学ぶことがほとんどなくて。同じくロンドンに住んでいた伊藤くん(現在はNICENESSのセールス担当)とかと会って向こうで、

石崎 遊んでましたか?

郷 はい、遊んでたんでましたね(笑)。Jas-M.B.というカバンのブランドがあるじゃないですか。Jasが日本のデザイナー探してて、パリでブランドやらないか?って出資してくれて、ロンドンベースで少しだけブランドをやってました。

石崎 ご自身のブランドということですか?

郷 自身のというよりはJasと一緒にやってた感じなんですけど。

石崎 : 時系列的にJasが流行ってた時ですよね。

郷 はい。

石崎 戻ってきたのは何年ですか?

郷 あんまり把握してないのですが、10年前くらいですね。27くらいの時。

石崎 NICENESSはもっと最近ですよね?

郷 : 今から2年前くらいですね。

石崎 それはご自身1人でやってるってかんじですよね。

郷 : 帰国後小さいながらデザインの事務所作ったんです。工場さんと一緒にブランドやったりとか、メーカーさんから依頼を受けて、ブランディングからブランドの立ち上げまで一緒にやるとか。そういうことやりながら、どっかしらでもっといいもの作りたいと思っていたので、自分でやろうってやり始めたのがNICENESSですね。

石崎 初め僕見た時は友達が働いてるお店で扱っていまして。それこそ1stシーズン。よく覚えてますがインポートっぽく見えたんですよ。纏ってる雰囲気が。クリーニングから返ってきたみたいな札がついてましたよね。

郷 : はい、納品形態までデザインの一部だと思っていて。

石崎 それがわざとらしくなかったんですよね。いかにもパッケージングしてますみたいなことには見えなくて。とにかく自然だなと思った。インポートかと思ったら日本のブランドで驚きました。

郷 : 嬉しい。ありがとうございます。

石崎 : はいここからは”LAVOS”について。このモデルの原型は1st シーズンに発表されていました。何ジャケットっていう名称はあるんですか?

郷 カーコートですね。30s40sのアメリカのカーコートをベースにしているけどパターンはすごく変えてて。機能的な部分はカーコート。ただこのアメリカっぽい見た目とは裏腹に、仕立てだったりパターンの技術っていうのはすごくヨーロッパ的なんです。

石崎 : なんとなくですけど、イギリス人がアメリカの服作ったらこうなる、みたいな。良い意味でチグハグを感じました。多分ロスの風景には似合わない。そして今回1stから形を変えてますよね。

郷 パターンをいじりました。よりバッサリ着れるように。あとなんと言ってもライニングのムートンですね。このムートンは結構大変だった。イタリアで原皮を仕入れて現地で染めてもらって。品質はとても満足しています。

石崎 一概には言えないですけど、卸先がある程度決まってるブランドさんなんかだと、はめなきゃいけない価格帯とかあるじゃないですか。今回はそういうことを極力無視してもらいました。

郷 : ここまで贅沢なものは初めて作りました。

石崎 うれしいです。早速着てたんですけど、これ着て缶コーヒー飲んでたんですよね。先日超寒い日あったじゃないですか。そしたらその時に来たお客さんとこれボスジャンだね!って盛り上がって(笑)。 当たらないボスジャン。確かにと思って、すでにボスジャンて呼んでます。

郷 : ははは(笑)。でもまあそういうことですよね。

石崎 : とにかくムートンがすごく効いてる。あるのと無いのとでは全然捉え方が違いますもん。急にラグジュアリー感出たなと。

郷 普通のカーコートには無いのですが、アメリカのカーコートって内側にムートンを敷いてるものもあるんですよね。そして表面もレザーで。でも中のムートンが着脱式のってないんですよ。ということはこのムートンを表に重ねて着ることもできるということです。

石崎 : 以前からずっと言ってますよね郷さん。表に着るの推し。

郷 そう、僕的にはかっこいいんじゃないかと思ってるんですけど。

石崎 俺中派っす。

郷 : うんそうですか。クマジャンみたいに着るのもありかなっていう提案なのでお好きに。

石崎 言葉が合ってるかわからないですけど、高そう。すげー高そうに見える。

郷 僕も出来上がった時に高そうって思いました。

石崎 : 勿論お値段もそれなりにするんですけど、パッと見た時に20万円代とかじゃ買えない雰囲気があることが新鮮だと思って。ここ数年、ブランドバリューだったりローンチ演出を派手にすることで、正直クオリティそこそこでも付加価値で値を爆発させることって増えたじゃないですか。でもこれはそうじゃなく単体として、先入観なしで見たときに、あ、すごい高そうって感じる。モノの良さがはっきり出てていいなあと思いました。

郷 ありがとうございます。あとこだわった部分で言うとタグですね。

石崎 : このタグ好きですよ。

郷 ヌメの革を紫外線で焼いてるんです。

石崎 焼いたんだ?

郷 太陽光で焼いたんです。

石崎 : ほんとだ。エンボス加工じゃない。

郷 黒いシートを載せて文字部分だけ抜けるようにして、だから文字だけ日焼けしてるんです。3週間くらいスタジオの窓際のところで。西日が強いから。

石崎 そういう発想もあまり日本人ぽくないですよね。

郷 ここからさらに時間が経過していくとアメ色に変化します。ロゴは残ったまま。

石崎 : そういえばLAVOSってどういう意味ですか?

郷 ラビッシュとブラボーを掛け合わせました。ラビッシュの意味としては豊富な、贅沢な、とか。ブラボーは素晴らしいとか、偉大なという意味。その2つが合わさったようなものだということで、LAVOSという名前にしてみました。

石崎 : NICENESSという言葉と通じるものがあるしすごく自然ですね。

郷 : NICENESSは良いものは良いっていう、コンセプト的なものは何も言わないでいまして。素材が良ければそれに付随する全てが良いってことなんで。

石崎 : なるほど。一方LAVOSは欲の塊、的な。

郷 そうですね。贅沢ですよね。

石崎 : あとムートンのこの紐?これ可愛いです

郷 ハンガーにかけるフック部分って、アメリカだと金属が付くんですけど、かぎ針でリネンで編むことでチェーンを表現してます。なので全てが天然素材なんです。

石崎 : こういうなるだけ冷たさとか硬さを和らげるのが郷さんのセンスですよね。馬革はイタリアですか?

郷 いえ、日本です。

石崎 : なんだろう、すごくしなやか。

郷 僕自身、手袋の仕事をしてて、手袋の革ってすごく厳しい基準があって、要するに伸びないとダメなんですよ。伸びるということが洋服のガーメントの基準よりも高いんです。その手袋用の馬革で作りました。

石崎 手袋用のホース?具体的にどう違いますか?

郷 やっぱり伸びる感じと言うんでしょうか。ホース特有の男臭い感じが無い。あと表皮が厚いので、すいてもある程度しっかりしてます。ムートンを外してもらってレザーコート単体でもあたたかいですよ。特殊な革になるのもあり、製作は1人の職人さんにお願いをしています。

石崎 : たしかに男の革ジャン感は無いですよね。ボスジャンって呼んでるけども。

郷 コルビジェの着ていたレザーのジャケットわかります?

石崎 : あのボロいやつですね。なんとなくわかります。

郷 レザーのカーコートみたいなのがあるんですけど、それにも近しいところがあると僕は思ってます。

石崎 : あぁ、言わんとしてることは分かりますよ。それを言い出したら、椅子に合う気がしますし。そういう、なんだろう、どこか建築的なプロダクト感がありますね。

郷 : そうですそうです。僕自身プロダクトっぽい作り方するんで。そこを感じてもらえるのは嬉しいですね。

石崎 シンプルなんですけど存在感がすごく強いんで、コーディネートに苦戦する人がいると思うんですね。どかっと着る。何かこう、どう合わせるのがおすすめとかあります?

郷 ライナーがあるんで、Tシャツの上にラフに着るのがいいかなあと思いますね。

石崎 : やはり下は薄着が格好良いですよね。ただそうすると真ん中だけ寒いんですよ。僕は前開けて着るのが好きなので。

郷 : 薄いニットとかで丁度良いのがあればいいですけどね。

石崎 : さてそろそろお時間です。最後に、郷さんにとってモノ作りとは?

郷 : モノ作りが最終ゴールじゃなくて、コミュニケーションだと思っています。モノをつくることによっていろんな人と接点を持ってコミュニケーションをとって、新しいものができたり、新しい発見ができたり、モノ作りの先がどんどん広がっていくのが重要だと思っています。何のために作ってるんだろう?と思うときに、こういうモノを作ってることで人との出会いがあって、新しい価値観ができて、で、またそれが次の洋服になって、という循環ですね。

石崎 : 素敵。郷さん素敵。やり込み系の作り手さんの大半は作って完結してしまう場合が多いと思うのですが、郷さんはその先を見ているんですね。そしてまた回帰するという。

郷 そうですね。プロダクトに近いと言ったのにはそういうところもあるからかもしれません。全部、全て含めての完成度をより深めたいですね。

石崎 : ありがとうございました。

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