Fuji.Wara

2019.06.18
Interview

インタビュー第二回目のゲストはVINTAGE ROLEXコレクターのFuji.Waraさん(フジドットワラ)です。
世界中に熱烈なファンがいるVINTAGE ROLEX、通称VRの世界。近年高騰し続ける中で、今買うべきおすすめの個体や今後の市場の動向、そして見るべきディテールのポイントなど分かりやすく(?)解説していただきました。

はじめに言っておきますが、沼の最も深い場所に生息するヘビー級コレクターがこうして本気で語ってくれるのは中々希少なことだと思います。お楽しみください。

石崎 : では宜しくお願いします。まずはじめにロレックス歴を教えてください。いつから始めて、かれこれどれくらいでしょう?

Fuji.Wara : 始めたのは2002年とかかな。

石崎 : たしか元々はアンチロレックスでしたよね?

Fuji.Wara : アンチでしたね。

石崎 : でも時計自体は好きだった?

Fuji.Wara : そう。時計自体は好きで、2000年くらいかな。いわゆる高級時計を買い始めた。

石崎 : でもアンチロレックスで(笑)

Fuji.Wara : うん、だね。IWCのドッペンクロノとかそれこそチュードルは買ってた。クロノタイムね。あとブレゲ タイプ20のアエロナバルという現行とか、そういうノリだよね。

石崎 : なんで嫌いだったんです?

Fuji.Wara : え、かぶるから(笑)

石崎 : 単純(笑)。それはヴィンテージロレックスがブームだったからでしょうか?

Fuji.Wara : いや、現行が人気だったよあの頃は。現行信仰の強い時。

石崎 : じゃあきっかけってなんだったんでしょう?

Fuji.Wara : たまたま質屋にGMTのラディアルミラーダブルスイスが48万円で置いてあって。

石崎 : 安!

Fuji.Wara : ミラーでそれは今考えると安いよね。当時はまだ”ミラー”という呼び名がなくて、”鏡面仕上げ”って呼ばれてた。

石崎 : はいはい(笑)

Fuji.Wara : まぁまぁ良いコンディションで、ミラーだったし、これだったら被らないかもと。当時みんながしてるGMTってフチあり(ダイヤルインデックスにフチがある80年代以降の仕様)じゃない。だからこれだったらアリだろう、と。

石崎 : たしかにミラーとフチありとでは印象が全く違いますよね。

Fuji.Wara : そうそう。で、そこからヴィンテージのロレックスは面白いなぁと思い始めて、66,7年までのミラー(鏡のような質感のダイヤル)を中心に探し始めた。

石崎 : そこから現在までで、手離したもの含めてトータル何本くらい手に入れましたか?

Fuji.Wara : んー。50本くらいかな。

石崎 : Fuji.Waraさんって役物好きというか、ノーマル系をわざと外すじゃないですか。当時からレアな仕様を厳選して買ってました?

Fuji.Wara : そうだね。やっぱりかぶるのが嫌いっていうそこだね。普通のマット(67年以降のダイヤル)じゃ満足いかない。

石崎 : なるほど。ところで、昨今のVRブームってすごいじゃないですか。昔は主に日本国内を中心に起こっていたことだったと思うんです。世界中って感じじゃなかった。もちろん外国でもやっていた人たちはいますけど、パイが明らかに以前とは桁違いというか。

Fuji.Wara : インターネットの普及が大きいよね。今は世界共通認識。

石崎 : そして値段の上がり方がすごい。Fuji.WaraさんのようにダブルスイスGMTが48万円で買えた時代を知っている身からすると今の状況ってどう映ります?

Fuji.Wara : まさかだよね。こうなることを予測して買ってたわけじゃなかったし。

石崎 : 僕なんかは2011年がデビューの年だったのでまだ買いやすかったですけど、さぁ今から始めるぞって人にはかなりハードルが高いと思うんです。ちなみにその当時48万円だったGMTは今買おうとするとおいくらでしょうか?

Fuji.Wara : 一本は行かないけど800くらいかなー。綺麗なものだと。

石崎 : 無理無理。ほんと無理。1本目で出せる金額じゃないですよね。新しく始める人たちが入りやすい、価格面でもレアリティの面でも、これ持ってたら渋いなーっていう満足度の高いおすすめの一本はありますか?

Fuji.Wara : すごく難しい。レアであればあるほど比例して値段が上がるからね。一概には言えないけど、ヴィンテージ知ってんなーと思わせるのは5513ミラー(サブマリーナ)かな。ミラーダイヤルって、30年代40年代のバブルバック時代から継承されている文字盤の作りなんだよね。バブルを踏襲しつつも外装は現代に近い。クラシックさとモダンさ、どちらの要素も入ったいいとこ取り。サークル付きだったら言うことなし。まぁでも5513ミラー高いわ(笑)。

石崎 : ですね(笑)。さて、購入する際の注意点について教えてください。ニコイチとかリダンとか、夜光ひとつとっても煩い人が増えてますよね。

Fuji.Wara : 私の場合はまずシリアル、裏蓋内側の刻印。そこで年代を割り出したあと、キャリバーと外装部品。ベゼルとか針ね。そして文字盤。例えば63年はアンダーバーがつくとか、TマークがつかないSWISSオンリーとか、62年は6ドットがつくとかさ、教科書的なものがあるのでそこから外れたものは極力手を出さないかな。もちろん存在していた可能性もあるけど。

石崎 : 定説から外れてると萎えてしまいますよね。ただ作られてから何十年って経っているわけだし、消耗したパーツはメンテナンス時に交換されてしまうというのは普通なことなんですが。でもフルオリの美学というか。そういうの、やり込んでると芽生えてくる。文字盤もやっぱり綺麗に越したことないですか?味がある個体が私は元々好きですけど、時代的にはミント物の需要が高まってますよね。

Fuji.Wara : どっちもありだよね。ミントは天井知らずとまでは言わないけど、手の届かない域になってきた。味系とミントはこの先さらに評価が極端になってくると思う。

石崎 : 半世紀以上経ってるのに超綺麗な状態を保ってる個体なんてまず玉数が無いですよね。

Fuji.Wara : もちろんモデルにもよるけど、同じリファレンス、時代、条件だとしてもダイヤルのクオリティの差で倍違う可能性がある。すごい時代になった。

石崎 : ではここからはお持ちの個体を見せてもらいましょうか。今VRは何本所有してます?

Fuji.Wara : 今4本。

石崎 : 多分意外と少ないと思う方多いと思うんですけど、めちゃくちゃ厳選されてますからね。気持ち悪いですもん、内容が(笑)。

Fuji.Wara : 激レアだね。まず普通のサブやエクスプローラーが無い。以前はもちろん持ってたし、今でももちろん好きだけどね。

石崎 : まずは一本目。(写真左)この369は何者なんでしょう?っていうか王冠マーク無いですけど。

Fuji.Wara : 謎が多いんですこれ。369ダイヤルって50年代初期のエクスプローラーなどプロフェッショナルモデル以外に、ドレス系のモデルにも使用されているんですよ。この個体はいわゆるドレス系の流れを汲む369ダイヤル。ただ王冠が無いことから察するに、Stern社(当時いくつかあったダイヤル製造会社のひとつ)が製造した交換用文字盤だと思われる。

石崎 : 僕以前6610の王冠無し持ってましたけど、同じ頃のダイヤル?

fuji.Wara : あれは”T”ついてたけどこれは”swiss”オンリー。年代は違うと思う。

石崎 : なるほど。これ34mmですよね。あ、34、35、36が揃ってる。同じ369ダイヤルでも1ミリ2ミリ違うだけで巻いた時の印象全然違いますよね。

Fuji.Wara : 34mmは日本人の腕に馴染みが良いサイズだよね。

石崎 : 続いてこれは?

Fuji.Wara : 1947年の5026。バブルバックなんだけど、普通32mmのところこれは36mm。ビッグバブルと呼ばれてるよね。シルバー文字盤の割合が多いんだけど、まぁそれもレアではあるけど、このブラックミラーは極少数。2002年のサザビーズに出ていた同個体だね。

石崎 : すごい。有名オークションに出ていたという履歴もすごい。そして36mm+ブラックミラーというスポロレ感。渋い。はい、次はDAYTONAですね。これは一見手巻きデイトナで、ちょっと詳しい人なら「おっ」てなるマニアックさのある6239ですけど、実はそれ以上にドロドロにマニアな仕様ですよね。

Fuji.Wara : 64年ダブルスイスのスモールデイトナですね。この一年前に”ルマン”という最初のモデルがあって、そのあと64年から初めて”DAYTONA”の文字が入るんだけど、この個体はダイヤル製造時に何らかの都合があったんでしょうね。ルマンの文字盤を流用してDAYTONAロゴを入れちゃってる。

石崎 : ルマンとスモールデイトナのハーフ的な。そういう現代では考えられない強引さが今となっては激レアに…。かっこよ。

Fuji.Wara : この本、レア系網羅してるから絶対載ってるよ。

石崎 : これかな。

Fuji.Wara : 見せて。フローティングロゴって書いてるの。これやね。うん、これやねこれやね。

石崎 : 個体数は?

Fuji.Wara : わかんないけど、探してる限り4本,5本しか見たことないね。

石崎 : さぁ最後はこちらですね。最近何かと話題の。

Fuji.Wara :” James Bond”っていう通称がね。昔から人気あるよね。

石崎 : ゴッドピースですよ。コンディションも良いし、レッドトップもついてるし。つけてみてください。

Fuji.Wara : いいよ。

石崎 : つけてるの初めて見た(笑)。

Fuji.Wara : つけてないからね(笑)。

石崎 : もっと言うとデイトナもつけてないですよね。どうしてですか?

Fuji.Wara : 器用な人はその時々で付け替えるけど、器用じゃないからさ。一回つけ始めるとそればかりになっちゃう。

石崎 : なるほど。でもそれ分かります。僕、洋服がそうなんで。年間で5パターンくらいしかない。そういえば常に次を探してると思うんですけど、どこで買ってるんですか?ディーラーから?

Fuji.Wara : ケースバイケースかな。それこそインスタで売り買いするときもあるよ。

石崎 : ちなみにネクストターゲットは?

Fuji.Wara : インターのマークナイン。

石崎 : ロレじゃないやつを即答。(笑)

Fuji.Wara : あ、ロレか。(笑)むずかしいんだよね。ロレは本当に好きだから。ミラーのサブ、GMT、エクスプローラーとか?納得のいく状態と価格であれば買うよね。うーん、ロレは次はどれだろうって特定の個体を狙うというより、常に探してる。

石崎 : 未だ見たことがない仕様の個体に出会ったりするとテンション上がりません?

Fuji.Wara : もうね、やばいよね。ビビる、ググる、寝れない。

石崎 : (笑)ありがとうございます。では最後に聞かせてください。あなたにとってVINTAGE ROLEXとは?

Fuji.Wara : 遊びかな。

石崎 : それ最高の答えですけど、軽いですね(笑)ちなみに前回インタビューしたLoloさんはクロコダイルのことを”地球と生命と時間の物語”って言ってましたよ。Fuji.Waraさん軽い。(笑)

Fuji.Wara : 軽いね。(笑)でもほんとにそうなんだよね。最初の頃はこれ買ったらやめようって、毎回思っていたの。陸海空全部揃ったー!上がったー!やめられるー!って。でもその瞬間に次のものを探しちゃってるんだよね。それである時気付いた。あ、これ辞めらんねーなって。だから、遊び。これからも探し続ける。止まらない。終わらない。

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