Laurent Stephan

2019.06.13
Interview

インタビュー第一回目のゲストはLaurent Stephanさん。通称Lolo。
母国フランスのHERMESにて勤めた後日本へ移住。クロコダイルスペシャリストとして革製品を手掛けるACCALMIEを立ち上げました。
具体的に何がどうなっていてどう凄いのか、モノ作りの解説とこれまでのエピソードを交えてお話を聞いてきました。

石崎 : こういうの初めてだからどう進めていいか分からないけど。まずはロロのヒストリーから?

Lolo : 僕のヒストリー?どうしてバッグを作るようになったのか、みたいな?

石崎 : 確かPhoto studioで働いていたんだったよね?最初は。そのあとエルメスに入って、辞めて、今。ですよね?

Lolo : そう。まんまそれが僕のヒストリーだよ。終わり。笑

石崎 : OK、じゃあPhoto studioではどういう仕事をしていましたか?

Lolo : 写真の現像をやっていたんだ。主にファッション関連だったよ。デジタルを使うこともあったけど殆どが手焼きだった。その間にハンドメイドのバッグに興味を持った。とても熱中できそうだったんだ。だから写真の仕事は辞めて1年間バッグ作りを学ぶことにした。

石崎 : エルメスに入る前に学んだんですね。そりゃあ経験がないと勤まらないもんね。

Lolo : 機械を使わず、オールハンドステッチの鞄を作りたくて。パリに良い学校があって、先生の一人がエルメスの職人だった。彼は※Meilleur Ouvrier of Franceの授賞者。彼から沢山のことを学んだよ。
※通称M.O.F。フランス文化の継承者にふさわしい、優れた技術を持つ職人に与えられるフランス国家の称号。日本で言うところの人間国宝に相当する。

石崎 : それはすごい。称号持ちというのも勿論すごいけど、何より学校の先生が現役のエルメスの職人ということに夢がある。日本だとなかなか無いことだと思うし。卒業後は?

Lolo : 卒業後、一人で始めるよりまずはどこかのファクトリーで働きたくて、HERMESに入社したよ。僕はそれまで鞄作りに興味があったんだけど、この頃から”革”のほうを魅力に思うようになったんだ。HERMESのためにタンナーやファクトリーに出向いて最高のクロコダイルを選ぶ。とても素晴らしい経験だった。8年間働いたよ。

石崎 : その後いよいよ100%自身のバッグを作り始めるわけですね。

Lolo : いえ、実はHERMESに所属しているときに既に作っていたんだ。自分用としてね。辞めてからは本格的にブランドを始める準備をしました。

石崎 : へー。見てみたいですね、初めて作ったモデルとか。興味あります。それでもうその時は日本へ引っ越してくる予定でいたんです?

Lolo : そうだね。日本はその頃もう意識していたね。そもそもモノ作りをフランスでしたいとは思わなかったんだ。

石崎 : え、なんで?

Lolo : フランスだと、自分のやりたい製作スタイルを仕事にするのが難しいと思った。勿論その時は日本のマーケットがどういうものかを理解していたわけじゃないけど。日本に住んでみたいと考えていたんだ。

石崎 : 何が難しかったんだろう。Loloさんのようなキャリアだと、フランスでやっている方が自然に感じますけど。

Lolo : 僕が作るモノのクオリティもプライスも、理解してくれる人はいるけどビジネスとしては通用しなかったんだ。例えば20個オーダーをもらったとして、作ることはできても納品まで1年もかかってしまう。それを待ってくれるお店は限られてくるよ。それにショールームやフェア(展示会)に参加して販売するスタイルではないから余計に難しい。

石崎 : たしかにヨーロッパはトレンド思考強いですもんね。ファッション性を重視するから、お店には有名なブランドしか並ばない印象があるかも。しかし日本は違うよね。インディペンデントなこともある種ひとつの特別的なものとして、有名なブランドと同じように肩を並べて見てもらえる。

Lolo : すごくよく分かります。過去にメルシーのバイヤーが僕のバッグを個人的にオーダーしてくれたけど、彼女は喜んで使ってくれているのに店頭用にオーダーをくれることはなかった。あとコレットとも話した。あそこも無名の僕が入ることは難しかったよ。アジアとヨーロッパではファッションの認識が全然違う。モノ作りよりもブランディングが大切なんだ。でもそういうことに僕は興味がない。

石崎 : でしたか。あと外国ではハイファッションって一部の人のためのものだし、なんだったら殆どが女性のためのものじゃないですか。でも日本は男性もちゃんと頑張る。頑張りすぎてオタクになってしまう。それくらい生活の大事な一部として根付いていると思う。それで日本に引っ越してからどうだった?

Lolo : 最初はどこで革を見られるか探すところから。フランスと違って右も左もわからないからね。まずは東京のレザーフェアに行ったよ。そこで良い人たちに出会えました。彼らは革を1枚2枚からでも買わせてくれる。フランスではこんな小ロットでは売ってくれないよ。自分でコンタクトをとって自分の仕事の話を聞いてもらって、それに必要な分だけ仕入れをする。楽しい毎日だよ。

石崎 : よかったですね。さてここからは一番聞きたい製作の裏側について。まずオールハンドステッチに拘る理由は?

Lolo : クオリティと縫い目の強度。それとエレガンス。そのためにミシンを使わず、100%リネンの糸(1940年代のデッドストック)を使用して、全てハンドで縫っているよ。”全てが手縫い”ということが僕にとって重要なことなんだ。

Lolo : こんなふうに機械とハンドでは違ってくるんだよ。

石崎 : …? …。確かに全然違いますね。クロコダイルについても教えてくれますか?

Lolo : HERMESにいて学んだから、クロコダイルが製品になるまでの全てのプロセスのことをよくわかっています。なによりクロコダイルが大好きなんだ。まずひとつひとつ違う表情をしているところが特に。

石崎 : タンナーは日本なんですよね?

Lolo : そう、クロコダイルは日本のタンナーから仕入れているよ。クロームとベジタブルのミックスなんだ。ちなみにカーフは全てベジタブルタンニンでヨーロッパ仕入れ。革はとにかくフィニッシングが大切。

石崎 : 子どものワニでしたよね?小さいもんね。

Lolo : 子どもじゃないよ。背中は使わず主にお腹を使うから小さく見えるんだ。Kinchakuで使うクロコダイルは4~5歳かな。

石崎 : それ子どもじゃん。というか今までベビークロコってお客さんに言ってましたごめんなさい。

Lolo : 大人だよ。大人の方がそれだけ革を取れる。腑は小さいのが好きだから、Siameseという種を使っているよ。アリゲーターとか、クロコダイルの種によって腑の形状が異なるんだ。

石崎 : クオリティの違いは?同じ品種でもグレードがあるでしょう?

Lolo : たしかにA,B,Cっていうグレードが存在はするね。しかし実際のところタンニンとフィニッシングが良ければ本来関係のない話なんだ。最初からそれらに長けているタンナーを選んでいるからクオリティは最高だよ。グレードというのは自然についた傷やシミのようなこと。前職のHERMESではすごく重要なことではあったけどね。

石崎 :たしかに HERMESでは求められそうですね。傷に煩いマダムとかいそうだし。

Lolo : とは言いながらも全ての革をチェックして結局ファーストグレードを選んでしまうんだけどね。笑

石崎 : Kinchakuはどういうパターンの構成なんですか?

Lolo : 勿論センターは使用しますが、ただ真ん中を使えば良いという話ではないんだ。いくら質の良いクロコダイルであってもカッティングひとつで台無しになってしまうからね。

石崎 : メンテナンスについて教えてもらえますか?クロコダイル専用のクリームとかありますけど実際どうなんですか?

Lolo : メンテナンスは必要ないです。

石崎 : やっぱりそうなんですか?

Lolo : オイルなど水分がたっぷり入れてある革だから、クリームなどは必要ないです。そのためのクロームとベジタブルのミックスなんだ。水に濡れるのはまったく問題ないけど、ワインはダメだね。

石崎 : 角の部分とか、スクラッチして色飛びしたりするじゃないですか。それもそのまま?

Lolo : どうしてもリペアしたかったら僕がやるよ。革によって反応が違うのでまずパッチテストをしないといけないんだ。

石崎 : 分かりました。さてそろそろ終わりの時間です。最後の質問。あなたにとってクロコダイルとはなんですか?

Lolo : 地球を代表する生物。彼らは約200万年もの間生き残ってきた最後の生物の一種なんだ。僕にとってクロコダイルとは、地球と生命と時間の物語。

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